愛ルケ（愛の流刑地） - 世捨人核語りき

愛の流刑地邂逅の章
　18年前に華々しく文壇にデビューしたものの、早々に煮詰まって表舞台から忘れ去られ、雑文書きに落ちぶれている作家、村尾菊治（筆名は章一郎）。55歳の今、同い年の妻とは離婚こそしないものの別居が続いている。そんなある日、仕事で京都に行った際、知人祥子に、デビューの頃から菊治のファンだという30代後半の人妻、入江冬香を紹介される。地味で控えめな女性だったが、「風の盆」を思わせる手のしぐさに見とれたのをきっかけに、菊治は冬香に惹かれる。二人との分かれ際、菊治は冬香の持っていない自著を送ることを口実に彼女の住所を聞き出した・・・。
　後日冬香を誘いだして唇を奪い、２度目の密会で二人はとうとう結ばれる。二人は互いに惹かれあい、その後京都で密会を重ねる。二人が心も躰も離れられなくなったところで、製薬会社に勤める冬香の夫が東京に転勤となり、一家で新百合ヶ丘に移住。冬香は菊治の住む千駄ヶ谷の部屋に通い始め、逢瀬の機会がますます増えていく。冬香は体を重ねるごとにエクスタシーの度合いを深めていく。夫に体を求められても拒絶しているという冬香に、菊治は強い愛情を感じる一方、彼女の家庭も気になり始める。妻であり３人の子の母でもある冬香の立場に、菊治は強く心がかき乱される。

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