「移民」とは?「難民」とどう違うのか?

 残念ながら国際的に合意された「移民」の定義は無いらしいが、そんな中、頻繁に引用されるのが、1997年に当時の国連事務総長が国連統計委員会に提案した(長期の)移民とは、「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも1年間、その国に居住する人のこと」となっている。
 入国する目的や原因には一切触れていないので、海外赴任、転勤、留学、研修、海外旅行なども1年以上であれば、その目的はどうでもいいことになる。
 但し、この定義の採用は限定的で、例えば欧州連合EU)では「EU加盟国以外の国の国籍を持ち、EU諸国内に3か月以上滞在する外国人のこと」と、滞在期間が3か月とずっと短く設定されています。
 また日本の国内法には「移民」の定義はありませんが、入管法上の「中長期在留者」と「特別永住者」が「移民」に該当すると、国際機関では解釈しています。これによると、2015年末の時点で既に223万人の「移民」が日本に居住している。世界全体の移民数は、各国政府が採用している定義がバラバラなので正確な把握は難しい。だいたい2億4400万人くらい。

 「難民」の定義は国際法において明確かつ厳格に決まっています。1951年に締結された「難民の地位に関する条約」の第一条にその定義で、以下の条件全てを満足する人だけが「難民」であるとします。まぁ、よく目にするアノ4条件です。
(1)自国において「迫害をうけるおそれ」がある
(2)「迫害のおそれ」が、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見に基づく
(3) 既に自国外に逃れている
(4) 自国政府の保護を受けることができない(あるいは迫害のおそれがあるから保護を望まない)

 これに加えて更に、「平和に対する犯罪、戦争犯罪、人道に対する犯罪、避難国外での重大な犯罪(但し政治犯罪ならOK)、あるいは国連の目的や原則に反する行為を行ったことがない」、という条件もクリアする必要があります。このように、国際法上に言う「難民」の正式な定義は、非常に限定的なものである。

外国人労働者受け入れを問う (岩波ブックレット)

外国人労働者受け入れを問う (岩波ブックレット)

 現政権は、国際移住学的に全く通用しない「移民の定義」を提唱し、「移民政策ではない」と言う詭弁の下で外国人受け入れを拡大し続けていますが、実は同じような政策を採ったのは日本政府が初めてではありません。西欧諸国の多くも、第二次大戦後かなり長期にわたって「我々は移民国家ではない」という建前の下、「数年で帰る一時的出稼ぎ労働者」を大量に受け入れてきました。

 つまり同じ失敗を繰り返す事を承知で、行おうとしている訳で、「失敗することに意味がある」訳だ。横並びしておかない理由でもあるのあろうか。労働者不足や人口減少だけを大儀にするには軽薄過ぎる。そして、犠牲になるのは自国民である。