白い巨頭

本日より2週連続でCXアンコール特別企画として「白い巨塔/原作・山崎豊子」が放送されるので、過去に書いた番組解析を掲載します。

 我々のジェネレーションでは財前五郎と言えば「タイムショック」の田宮二郎の熱演(映画は1966年TVは1978年)が懐かしいがそのリメイク版に唐沢寿明をブッキングしたスタッフの先見性は大したものである。1990年にテレ朝系で村上弘明が挑むが失敗に終わっているからフジテレビ開局45周年の冠を意識した上層部慎重派からは様々な異論が出たことであろう。俳優としてギリギリの状況下で演じるであろう唐沢と財前とのシンクロを想定したものと推察できる。15歳での初オーディション落ちで始動した役者人生はNHK「純ちゃんの応援歌」で、やっと陽の目を見た彼は既に24歳。それを支え育てたのは他でもない、その時に共演し後に妻となる女優の山口智子である。



 「第1部」放送開始当初には里美脩二役を江口洋介とした点で「愛という名のもとに(1992年)」を連想し今イチ緊張感に欠けるものになると推察していたが、二人のカラミの演出は絶妙で推察は見事に裏切られた。脚本の井上由美子の才能か演出の西谷弘らの感性なのかは知る由もないが、「友情」という裏テーマによって緩慢になりやすい流れを張詰めた緊張感を維持しながら「第二部」へ移行した。だが「第一部」での最優秀ブッキング賞は大河内教授役の(元転形劇場)品川徹である。彼の声は海外ドラマの吹替などで聞き覚えのある方も多いだろう。いつものように脇に徹するかと思えた彼が教授戦でのキーパーソンとなり、第二部でも、「証人」としてその存在感を示した。逆に佐々木庸平役の田山涼成や、その息子の佐々木庸一役の中村俊太(中村雅俊の息子)は関西人には違和感を感じた。


白い巨頭/メジロアサマ
 「第二部」では少し前から業界でのトレンドである「訴訟」を取り扱っている点はミーハー的ではあり、重くなることを恐れて実際の「医療過誤訴訟」とは異質のスピードで展開する様は滑稽でもあったが、ここで目を見張ったのは教授としての役作りの為に数キロ体重を増やして好演した(であろう)唐沢もさることながら、演ずることへの緊張感を演じた冷徹緻密性にうまく置換演出された国平弁護士役の及川光博である。回を重ねる度に、それを自身のものへ昇華した彼の感性は大したものである。顔見せシーン(応訴の為の会議)と後の法廷シーンでの彼の演技の差は唐沢をも喰っていた。

 王子様は並の王子様で無かったと見直した。第一部での小林正寛(第一外科医局員)や第二部での上川隆也(原告弁護士)などのブッキングミスを十分補填したものである。だが、「第二部」での好演はやはり池内順子(財前の実母黒川きぬ役)である。そして田宮二郎の「白い巨塔」の目に見えぬ重要な部分を伝承る裏オペレーションとしての野川由美子の役割は非常に大きかった。CXが、安易に息子の柴田光太郎を抜擢しなかったのは正解であった。

白い巨塔〈第1巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第1巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第2巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第2巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第3巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第3巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第4巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第4巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第5巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔〈第5巻〉 (新潮文庫)

白い巨塔 DVD-BOX 第一部

白い巨塔 DVD-BOX 第一部

白い巨塔 DVD-BOX 第二部

白い巨塔 DVD-BOX 第二部

白い巨塔 劇場版 [DVD]

白い巨塔 劇場版 [DVD]